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今回はフィンランドのブルーベリーの様子についてフィンランド在住のムーミン研究家・森下 圭子(もりした けいこ)さんのコラムをお楽しみください!
フィンランドでブルーベリーといえば、野生種のビルベリーを指します。普段日本で目にするブルーベリーとはパッと見ても違いが明らか。実がとても小さくて、そして地面に近いところに生えているのです。森の動物たち、鳥たちもブルーベリーはよく食べていて、散歩途中にブルーベリーに夢中になる犬たちも少なくありません。熊にいたっては、冬眠前に何百kmという距離をブルーベリーを求めて移動することもあるのだとか。大自然の中で育つブルーベリーは、こんな風に多くの生きものたちで分かち合っているのです。
野生種とはいえ、ブルーベリーはヘルシンキでも身近で、散歩途中に見かけるような存在。なので人々は花が開く頃から足を止めては、刻々とブルーベリーの動向を見守っています。
夏が本格的になった頃、ブルーベリーは摘み時を迎えますが、ヘルシンキでは競争率が高く、かといってまだ熟していないものを摘んでは残念です。私は摘み時を鳥たちに任せています。いつもは白い鳥の糞が紫色になっていたら、鳥がブルーベリーを食べていることが分かります。つまりブルーベリーが美味しくなった証拠なのです。
フィンランドの人たちにとってブルーベリーを森で摘むのは、夏休みの家族行事のひとつと言っていいかもしれません。小さな子どもは琺瑯のマグを、または小さなカゴを持ち、大人は大人でカゴやバケツを持って森の中でベリー摘みをします。誰もかれもが森の恵みを自由にいただけるのは、フィンランドをはじめ北欧には「自然享受権」があるからなのです。これは、誰の所有であれ、人は自由に森を行き来していいというもの。しかも毎年生えてくるものであれば、自由にいただいてしまっていいのです。つまり、誰かが所有している森でも、ベリーやきのこを自由に採っていいという訳です。
森の中でブルーベリーを摘むことは、フィンランドの社会や人々の考え方を学んでいるようにも思います。
たとえば誰の所有でも自由に行き来し採っていいベリーですが、人は森の恵みが自分以外の人々や生きものたちにも大切だと知っています。だから、むやみやたらと採ることはしないし、もし視界にサマーハウスや家が見えたら、そこから先は入りません。
森に入り、自分の感覚を頼りにベリーを探す楽しみ。自由に歩きながらも他者の存在を考えて森の恵みを分かち合うことを意識する行動。これってフィンランドの社会の基盤になっている気がします。
森下圭子さん
(Keiko Morishita-Hiltunenさん)
ムーミンが大好きで、ムーミンとその作家トーベ・ヤンソン研究のためにフィンランドへ渡り、そのまま住み続けている森下さん。
今はムーミン研究家として、また執筆やコーディネートなどで、日本へフィンランドを伝える窓口として、幅広く活動中。
森下圭子さんのフィンランドの美しい自然や日々の暮らしをつづったエッセイ「Moi from Finland」は下記リンクよりご覧いただけます。